悲しい夢と、ある朝の緊張
国家機密を背負った任務を果たすために
急に娘から身を隠さなければならなくなった
ガラス越しに、いなくなった僕を探して走り回る娘を見る
悲しさが溢れ、胸がどんどん苦しくなる
息が、本当に吸えないくらいに苦しくなって
― そこで目が覚めた。
夢か…悲しい夢だったな…
などと思ったのもつかの間、息苦しさがなおも続いていることに気づく。
上手く息が吸えない。
首に圧がかかっている。
手の感覚もおかしい。
そして、熱い。
これは、まさか ―
焦る気持ちを落ち着かせ、状況を整理する。
なぜ息が吸えない?
首の圧は何だ?
上手く動かせない体でどうにか右に目をやると、娘だ。
娘がいる。
そして僕の首に食い込んでいる。娘のひじが。
そういうことか…と思い、無理やり上半身を起こす。
しかし変わらない。
なおも続く呼吸の異常。
肺が痛い。
手も痛い。
どうなってる ―
瞬間、脳裏にあるイメージがよぎる。
鍬を振り下げ、桑の木の根を叩き切る男 ― それは昨日の、僕だ。
そうか…これは…筋肉が…
納得した。
日頃使わない筋肉を短時間で本気で使った結果、僕の上半身は悲鳴を上げていたのだ。
筋肉痛の、たちの悪いやつだ…
息苦しさは続いていたものの、原因がわかって安堵した。
手が痛くてよかった。
呼吸の症状だけだったら、いろいろ心配したところだ。
よし、寝よう。
これはただの筋肉痛だ。
そして僕はもう、国家機密は背負っていない。
悲しむ必要も、心配する必要も何もない。
そう思って振り返ると、娘が心地よさそうに眠っていた。
僕の枕に覆いかぶさるようにして。
僕の枕…
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